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福岡地方裁判所 昭和43年(む)959号 決定

被疑者 不破正憲

決  定 〈被疑者氏名省略〉

右の者に対する暴力行為等処罰に関する法律違反被疑事件について昭和四三年一二月一四日福岡地方裁判所裁判官がした移監に同意しない旨の裁判に対し、即日福岡地方検察庁検察官から準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件申立を棄却する。

理由

本件申立の趣旨は、「原裁判を取り消す。被疑者を博多警察署に移監することに同意する。との裁判を求める。」というのであつて、その理由は別紙のとおりである。

よつて、一件記録を検討するに、なる程現在被疑者の在監する拘置監は、定員四六八名という規模の収容力を有し乍らも調室は僅かに三室しかなく、そのため捜査官が被疑者の取調のため右拘置監に出向いても、調室の満室時には多少の時間待機せざるを得ない場合があり、そのうえ所謂「面通し」に使う透視鏡の設備がないことなどもあつて、捜査に多少の不便をきたしていることは否めないのであるが、仮に右事実が検察官にとつて勾留状執行後あらたに判明したものであり、従つて移監の同意請求を理由あらしめるための事情であるとしても、本来勾留の目的は被疑者の逃亡や罪証湮滅行為の防止にあるのであるから、勾留場所は原則として拘置監とされるべきであり、本件被疑者の場合の如く一旦拘置監に勾留しながら勾留状執行後数日をいでずして代用監獄たる警察署の留置場に移監するには「特段の事情」を必要とすると解すべきところ、前記事情をもつてしては未だ移監に同意するに足る「特段の事情」があるということはできず、その他申立人所論の捜査機関および拘置監内部の諸事情も右「特段の事情」を肯定させるに足りるものではない。

よつて、移監の同意請求に対し、同意しなかつた原裁判は相当であつて、結局本件申立は理由がないことに帰するから、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により主文のとおり決定する。

(裁判官 真庭春夫 富田郁郎 蜂谷尚久)

準抗告告申立書〈省略〉

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